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■ジャズ&ポップス演奏基礎講座

筆者:清水康弘(Tp)

 ジャズやポピュラー音楽は、親しみやすく、ノリがいい、楽しい音楽です。しかし、演奏してみるとどうでしょう?!”何か様にならない””カッコよくない”等と悩んだ経験はありませんか?もともと管楽器で演奏される音楽や吹奏楽は、基本的にクラシックを中心に発展してきたもので、演奏者もクラシックの奏法だけを身につけてきた訳ですから、いきなりジャズやポップスを演奏しようと思ってもやはり困難がつきまとってしまうわけです。音を出したりコントロールする基本的な部分は、クラシックの奏法との相違点は基本的にはありません。では一体何が違い、どう演奏すれば”ジャズっぽく”なるのでしょうか?!
 ジャズやポップスのならではの読譜上の細やかな約束事を理解したりジャズタンギングやシェイク、ベンドにダウン・・・と言った、特殊奏法やテクニックをマスターすると言うことも必要になってきますが、最も重要なことは、常にリズムを感じ、リズムを意識した演奏を心がけることです。なぜならジャズ&ポップス音楽には、常に根底に流れるリズムがあるからなのです。
 この講座を参考に、ジャズ&ポップス演奏をより楽しみ、レベルアップできるよう、しっかり頭に入れて練習に生かして下さい。

 管楽器全般に共通する内容を!と思って作成しましたが、筆者がトランペットが専門のため他の楽器では難しい表現が出てくる場面もございます。ご了承下さい。

 

−目次−

ウォーミングアップ
呼吸法
続・呼吸法
タンギング
音の処理
音のカット
特殊奏法


ウォーミングアップ

 ウォーミングアップは運動する前の準備体操と同じです。 おろそかにすると良い音が出なかったり、すぐバテたり等、いい事はありません。 しかし、あまり長い時間行っても効果は薄れるし、誤ったやり方をしていては逆効果になってしまいます。 教則本を見 ても、先輩やプレイヤーのアドバイスを聞いても、人それぞれのやり方があってよく理解できていないのが現状でしょう。 厳密に言えば、人それぞれ顔や骨格・筋肉が違うのでウォーミングアップは人それぞれ違って当たり前なんですが、ではどういう点に気をつけて行っていけば良いのか説明しましょう。

1.負担のかからない音をリラックスしてロングトーンする。(音量はmp位)
2.その音から上下に半音ずつ徐々に広げていく。(音量はmp位)
3.リラックスして吹ける音域中の1オクターヴ位をpp<ffまでロングトーンする。(音程,音色に注意し、徐々に沢山息を吸う様に心掛ける)
4.テヌート,スタッカート,マルカートでタンギングの練習。
5.スラーの練習。

※1〜3では無理なく口唇を振動させ、呼吸を深くする準備運動。4と5では舌と口の周りの筋肉の準備運動。

 上記の内容が出来れば充分なので、吹き始めの約15分行う様にしましょう。

注)ウォーミングアップの前に大事なことがあります。
  リードのセッティング、スライドクリームやバルブオイルを塗る事です。
  楽器を吹く前に必ず行う習慣を身につけましょう!

 次に管楽器奏者では最も大切とされている呼吸法についてです。呼吸法が万全ならアンブシュアも自然に良くなると言われるほど重要なことなのでしっかりマスターして下さい。


呼吸法

 呼吸は生まれた瞬間からの無意識の動作ですが、楽器を吹奏する時はそれを意識的な動作に切り換える事が必要です。そして、訓練によって習慣づけるのが「呼吸法」です。では、"どう意識し訓練するか?!" という事ですが、まず、意識すべきポイントをあげてみましょう。

1.姿勢を正し、上半身をリラックスさせ、重心を落とす。
2.静かに音を立てないでブレスをとる。
 (音がするのは余分な抵抗が加わってブレスが浅くなる)
3.ブレスの深さはフレーズの長さ・音量に比例する。

 という、管楽器奏者にはよく言われる当たり前の事ですが、以外と意識をしてないとおろそかになりがちなものです。基本中の基本と思っていつも意識する様にしましょう。


続・呼吸法

 さらにもう1点。肺の全能力を引き出そう!!という事。普段の生活では我々は肺の 容量の3分の1程しか使っていません。管楽器を吹奏するという動作を行おうと思った 場合、その肺の全能力を引き出さなくては、いい音・難しいテクニック・耐久力等攻略できないのです。具体的に肺の全能力を引き出すため、次の3点に注目してみましょう。

1.横隔膜(おうかくまく)の呼吸
俗にいう腹式呼吸の事ですが、よく勘違いされているケースにお腹に空気をためる 事と思われがちです。しかし実際は、お腹で呼吸できる訳はなく、横隔膜を下げて肺の下部に息を入れるという事。咳きばらいをする時に動く部分が横隔膜で、その辺りが 膨らんでいく様に息を吸う事がポイント。深く吸えるようになると腰の方まで息が入った感じがしてきます。

2.肋骨(ろっこつ)の呼吸
胸式呼吸の事で、普段の生活で無意識に行っている呼吸。胸の辺りが膨らんだり縮んだり"肺ってここにあるんだ" と認識できる自然な呼吸です。管楽器はこの呼吸は使わないものと思われがちですが、ウソ!! この部分もフル活用します。椅子に座り、上体を前に倒して深く呼吸をすると、だんだん空気の入るスペースが広がってくるのが 分かるはずです。

3.鎖骨(さこつ)の呼吸
マラソンの後やハードな運動の後などで、肩で息をするという状態の呼吸。 管楽器を吹く時も姿勢を正し、リラックスした状態で肩を前から後ろに回しながら 息を吸うと、肺の上部のいつもは使ってない部分に息が入ります。

 上記の3種類の呼吸を123の順で、最初はゆっくり確認しながらトレーニングしてみましょう。テンポよく出来るようになったら、メトロノーム等にあわせて、リズムにのせて2拍で・1拍で出来るようにやってみましょう。

 ここまでは音を出すための基本動作でしたが、いよいよ実践です。"ジャズっぽく"聴かせるポイントの中でも、最も効果的なのが"タンギング"と"音の処理"です。クラシック専門の方々が苦手にしているのも、この部分でしょう。「クラシックしか演奏しない」という人以外は、日頃からトレーニングに導入していくと、"よりジャズっぽく"、"よりカッコよく"なります。


タンギング

 タンギングと言えば皆さんは普段、Tu-TuとかTa-Taと発音する様にしていませんか?! そういう風に教わるし、教則本等にも書いてありますよネ。それは正しいんです。 クラシック音楽を中心に、ほとんどの音楽を演奏する時はTu-TuとかTa-Taの発音で良いのです。 ジャズやポップスの場合も、Tu-Tu,Ta-Taはもちろん使うのですが、8分音符が続いている時等は、主に"Du-Da"とか"Ru-Ba"等、濁った音で発音されます。 これは、ジャズやポップスは表現の仕方がクラシックより自由なので、発音によって ニュアンスを付ける(変える)音楽だから、ということが言えると思います。 また、リズムがアピールされ細分化されている音楽なので、鋭さが必要だったり、リズムの裏にくる8分音符をしっかり発音しなくては、レガートになり過ぎるからです。

 では、具体的にどういった練習を行ったら良いか、説明しましょう。

自分が最も出しやすい音で、8分音符の連続"Ku-Tu"もしくは"Ru-Tu(a)"を発音する。
(最初はダブル・タンギングの逆という意識を持つと良いでしょう。)

1.テンポを動かして練習する。
 (早い-遅い)
2.音階もしくは半音階で音を動かして練習する。
 (早い-遅い)
3.拍の頭はしっかり発音せず、裏の8分音符をアクセントぎみに出す。
(早い-遅い)

※テンポを遅く練習する時はハネて。テンポが速くなると裏の8分音符のアクセントも弱まりハネなくなる様に!!


音の処理

 皆さんは普段、指揮者の合図やカウントによってそろえて音を出す練習はしていると思いますが、フレーズの終わりや1つ1つの音に対しての処理は結構ほったらかしにしていませんか?! 指揮者の合図でフェルマータや長い音符の時など音を止めたりする事は あるでしょうが、楽譜に書かれてある1つ1つの音符の長さは意外と適当に吹いているものです。しかし、ジャズ&ポップスは、クラシックよりリズムがアピールされている 音楽なので、音の処理をしっかりしないと、せっかくのリズムがぶちこわしになって します。そこで、普段使わない動作として、舌で音を処理する・止めるという重要な動作が必要になってくる訳です。音を出すときに舌を使って発音するタンギングは、知らず 知らずのうちに出来てくると思いますが、音を処理する・止めるという動作に舌を使う事も、大事なタンギングの一種類として認識し、練習しなければならないのです。クラシックでのタンギングによる音の処理は簡単に言うと、響きを残した余いんの ある音です。悪くすれば、音を出した後は放ったらかしになりがちです。ジャズやポップス音楽ではクラシック風の処理も使いますが、歯切れのいい・余いんのない音が必要になります。音を出した後も舌で処理する事によって、リズム感やジャズならではの表情をつける事が出来るのです。

 上記の事より、音の処理がいかに大切か理解いただけたと思います。曲を生かすも殺すも、この音の処理にかかっている訳だ!!


音のカット

 音の処理について、簡単な例を使って説明しましょう。ボサノヴァやサンバのベース・パターンです。

(例)(準備中)

 ド-ソソ-ド ド-ソソ-ド|ド-ソソ-ド ド-ソソ-ド|〜と2小節。という楽譜があったとします。これをそのまま演奏したのでは、ダラダラとリズムが流れるだけでリズムも崩れやすくビート感が出てきません。そこで、下の様に演奏してみましょう。

(例)(準備中)

 どうでしょう?! こんなチョットした事で、リズムのメリハリが出て、安定感があり 、ノリもしっかり出てきます。ジャズ&ポップスは、2拍4拍にアクセントが感じられる音楽でもありますが、このパターンでは上の様に、アクセントを置く2拍目と4拍目を 感じて音をカットする事によって、2拍4拍のアクセントが感じられノリが出てくるのです。 あとは、長い音符の処理として、2分音符を演奏する場合であれば、2拍いっぱいに 音をのばし3拍目の頭で音をカットするとか、全音符でも3拍半の長さに全員そろえる とか、細かく音を止める事を注意・統一する事によって、リズムがしっかり出る様になります。音を処理すると言っても、音量や止め方の強弱によって雰囲気が全然違ってきます。 大きく分けて4種類の方法がありますので、下記を参考にして下さい。

☆音の処理のやり方について

だんだん小さくなり、消えていく感じのもの(dim.やdecresc.)
だんだん大きくなり、カットするもの(cresc.)
だんだん大きくなり、カットする時に音を放り投げるもの(cresc.)
音の立ち上がりからカットするまで同じ音量のもの(テヌートやスタッカート)
この4種類を、舌を意識して出来る様に行いましょう。


特殊奏法

 曲を演奏する上での味付けが、これから説明する特殊奏法です。無ければ何か物足りないし、やり過ぎればしつこいものです。マスターしてセンス良く対応しましょう。

サブ・トーン
 サックスにおいて非常に効果的な奏法で、唇の力をゆるめて息の量を多くします。声に例えれば、ささやいている様な音です。

フラッター・タンギング
 直訳すれば「はためく舌」となり、この奏法の特徴がわかると思います。奏法名の直訳どおり、舌を「巻き舌」の様に震わせて、荒々しい音を出します。

グロウル
 音を出しながら同時に声帯を震わせて(つまり同時に歌う)、うめく様な音を出します。デキシーなどのソロでよく使われます。

ハーフ・ヴァルヴ
 ピストンを半分押して音程が定まらない事を利用する奏法で、不安定なニュアンスを出したり、ポルタメントの効果があります。

シェイク
 トリルによく似ていますが、運指で音を変えるのではなく、唇と息のコントロールで音を変えます。音を変える幅や速さは、奏者のセンスにまかされます。

ヴェンド
 書いてある音を正しい音程で吹いた後、音程を少し下げてまた元に戻す奏法です。

リフト
 音の出だしをやや低めにして、すぐに本来の音程に持っていく奏法です。

ターン
 ある音から低い音に移る時、いったん上の音に上がり、また元の音に戻ってから次の音に下がる奏法で、クラシックの後打音によく似ています。ただし、クラシックの演奏法と大きく違うのは、これを運指で行うのではなく唇で行うという事です。

リップ・グリス
 出そうとする音に対して、上あるいは下から短くつく奏法で、その始まりの音は指定されません。

ダウン
 出している音を適当に下降させる奏法で、ドロップとも呼ばれます。素早く下がるショート・ドロップと、ゆっくり下がるロング・フォールとがあります。実際の演奏では、下がりはじめる位置や速さ、そして音を切る位置をそろえ様にしましょう。

アップ
 ハーフ・ヴァルヴやリップ・グリスを使って、決められた音まで適当に上がります。上がりはじめる位置や速さをそろえる様にしましょう。

ゴースト・トーン
 のみ込んではっきり出さない音です。運動における予備動作の様なもので、メロディ内でリズム的に重要な役目をします。

ヴィブラート
 音楽に、感情移入させるため音に波をつける奏法。音楽のジャンルやスタイルによってやり方は色々あるが、あごを使うもの、横隔膜を使うもの、楽器を揺らすものがよく使われる。

 

このコーナーの質問・お問い合せは「Q&A」にて筆者がお答えします。

個人的に質問したい方は、名前、年齢、職業(学年)、性別、楽器歴、使用楽器(マウスピースも)、質問内容を書いて筆者の清水康弘先生へメールにてお問い合わせ下さい。
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